あんだる記

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聲の形の感想

大人気漫画「聲の形」のアニメ映画が地上波初放送されました。

最初は2011年の週刊少年マガジンに掲載され、後にリメイク版、連載開始、単行本発売、遂には様々な賞を獲得...と徐々に人気を高めていった実力派の作品となっております。

とんとん拍子にいったようにも見えますが、週刊少年マガジンにおいてはいじめ、障碍者を題材としていることから掲載が見送られるなど世に送り出すに際して様々な苦労もあったようです。

 

オリジナル版、原作版、映画版、と様々にバリエーションがあるので中々一つの「聲の形」として評価するのは難しいのですが、ここでは映画版の聲の形について軽く感想を述べていきたいと思います。

 

主人公、石田将也は典型的な悪ガキといった少年で、普段はちょっとした度胸試しを楽しむ程度の普通の小学生であったが、先天性聴覚障害を持つ少女・西宮硝子がクラスに転入して来たことで様々な意味で彼の人生は大きな変化を迎えることとなる。

ほんの些細なことから彼は西宮硝子をいじめるようになってしまい、それは日毎にエスカレートしていった。

そんな日々が続いたある日、彼女の母親が娘がいじめられているのではと学校に相談したことで学級裁判が開かれ、いじめの主犯格であった将也は体よく利用されただ一人硝子をいじめていた人物として学級のスケープゴートとされてしまう。

この日を境に将也はスクールカースト下位に転落し、かつて自身が硝子にしていたようにクラスメイトからいじめの対象とされるようになった。

 

場面は変わり5年の時が経った高校3年生となった彼らは再び再開。

ここで将也の人生が再び変わり始める...

 

というのが序盤のおおよそのお話です。

 

序盤のいじめの描写などは中々に強烈で、硝子の行動・失敗の行動も強烈なので

共感性羞恥を感じるタイプの方は絶対に視聴出来ないくらいキツい描写が続きます。

 

学校生活の中でやはり障害を負っている硝子は教師たちに特別視され、生徒達にも配慮を要するという形になってしまうのですが、

硝子が特別に許されていることへの生徒の不満は反感となり、障碍者へ配慮をしなさいという大人たちの態度にも多感な時期の学生たちは更に反発を強め、その怒りは硝子に対してつらく当たるという結果を招いてしまいます。

 

 この時点でもかなりつらいのですが、この後も軽快なBGMと共に硝子に対するいじめの描写は延々と続けられます。

 やはりこの軽そうなノリで展開するのはいじめっこ側の視点で描写しているからなのでしょうか...

 

しかしそのような日々が永遠に続くはずもなく、ここで例の学級裁判が執り行われるのですが...

ここは本当に胸糞の極みです。

・ほぼノータッチを決め込んでいた癖にここぞとばかりに凄い剣幕で怒鳴りつける教師

・共犯者にも関わらずあっさりと裏切るクラスメイト達

・往生際悪く言い訳をし、責任転嫁しようとする主人公の将也

 ヤバいやつしかいない

 

 この作品のつらい場面もここである意味ピークを迎えるのですが、これでは足りないとばかりにこの後に更なる爆弾を投下してきます。

 

場面は変わり、主人公将也が自宅に戻った所から始まるのですが、

母親はいじめの事実について電話を受けて知っており、悲しげな表情で将也に対して

真実であるかを問い、将也が答えた後、謝罪に向かうと言うのでした...

将也は謝罪へと向かう道中で銀行の中で母が大金を手にしているのを目の当たりにします。

当然、これはいじめの過程で破損・紛失した硝子の補聴器の弁償代です。

この後、公園らしき所に到着し母親同士が対面するのですが、子供を交えず話をしたかったようで場所を移してしまうので実際にどのような会話が行われたのかは描写されません。

しかし事が済んだ後に母・美也子は将也に優しく声をかけ、明日からはいい子にするように、と言い聞かせます。耳から血を流しながら...

 

これまたつらいシーンです。

このような優しさによって罰されなかったことで将也は更に追い詰められてしまったのかも知れません。

 

 再び場面は変わり学校に。

将也は硝子が自分の机に何かをしているのを目撃します。

硝子は彼の机にあるいじめの落書きを消してくれていたのですが、将也は彼女がどのような考えで行動していたのかを理解出来ずに拒絶。

結果、猛烈な取っ組み合いの喧嘩が始まります。

男女の喧嘩とは思えないほど激しい取っ組み合いが展開されるのですが、

単なる肉弾戦ではなく互いの心と心のぶつかり合いであったのではないかとも思える歴史的な一戦でした。

この後落書きだらけの自分の机を掃除しながら、硝子が何をしていたのかを将也は悟るのでした。 

 

これが遠因ともなったのか、後日、硝子は転校していってしまいます。

 

 また場面は変わり、高校生となった二人は再開するのですが...

 

ここから別の作品か!?と思えるくらい雰囲気がガラリと変わるので、

いじめ問題・障碍者問題に関してのリアルな描写を求められる方が満足できるようなものとはなっておりません。

リアルに書いたら津山事件犯人の伝記とかになるでしょ

 

 硝子と再会した将也はかつて気付けなかった思い、理解してあげられなかった思いを伝えようと奮闘するが...というところで目が覚めて場所は自宅の二階。

朝食の準備を終えた母・美代子に呼び出され、食卓を囲います。

朝食を食べていると美代子はかつて弁償代として西宮家に払った大金を将也が枕元に置いていたことを優しく褒め、また、自殺を企図していたことに関しては強く諫めます。

 

前半の陰鬱でシリアスな雰囲気からの転換でこのコミカルで軽いノリは非常につらい

 

 なんだかんだでその場は収まり、学校に向かうのですが道中で将也はこれまでの人生を回想します。

中学の入学式でかつての同級生にいじめっ子であると流布され、つらい中学時代を送ったこと等...

その時は将也自身もブルーになって”自分が犯した罪はそっくりそのまま自分に返ってくる”などと考えて塞ぎ込んでしまいます。

でも他の奴は上手い具合に罰を回避してるじゃん

 

 回想を終え、学校に着くと全員の顔にが付いているという衝撃の映像が。

 更に周囲の人間が全員自身悪口を言っているように聞こえてしまうという...

元いじめられっ子の描写としては中々にリアルです。

 彼がどのような気持ちでこの数年間を過ごしたかも伺い知ることが出来るような場面となっております。

 

高校でも鬱屈した気分で過ごしていた将也ですが、ある時転機が訪れます。

それはクラスメイト・長束君との出会いです。

初めの印象はぱっとしないのですが、彼の人の好さを知ってからはあっという間に意気投合。

 

オナニーマスター黒沢という漫画を読んだことのある方なら既視感を感じたのではないでしょうか?

まぁ、非常にわかりやすい、まさしく主人公お助けマンです。

 彼は素直で気遣いも出来る最高の人類なのであらゆる面で将也の救いとなっていきます。

 

当初は硝子の妹である結絃に阻まれたこともあって将也は中々再開の機会を得られなかったのですが、長束君の助けもあって遂に再開を果たします。

紆余曲折あって再開したこともあり、最初はいい調子でいくのですが...

ここで再び妹の結絃ちゃんに阻まれ案件が発生します。

阻まれるといってもちょっとした悪戯程度なのですが、この流れの中で結絃も歪を抱えた人物であるということが明らかになりました。

家出した結絃を母親の元へと送り届けるという一幕があるのですが、ここの母親はラスボス感全開で全く将也を受け入れてはくれません。

娘を酷くいじめた相手なので当たり前といえば当たり前なのですが...

 

再開し関係を深めていく中で硝子が佐原さん(小学校時代に硝子をサポートしてくれようとしたがその事でいじめを受け不登校になった女生徒)に会いたいと将也に頼む場面がありました。

実際に会ってみると佐原さんとは上手くいったのですが、ここで将也は意外な人物

植野直花(女帝みたいな女)と再会します。

これがまた強烈で、スクールカースト上位に居座り続けた彼女と現在の将也とでは全く理解しあえず、気まずい雰囲気のまま別れることとなってしまいます。

 硝子を交えて3人で再開した時などは相変わらずのいじめっ子ぶりを発揮するなど、彼女は以前と変わらないままなのでした...

 

これ以降は遊園地に行ったりするなど明るい流れが続くのですが、

かつての将也のいじめの関係者・非関係者が集って論争が行われたことで将也は塞ぎ込み、硝子との関係も少し気まずいものになってしまいます。

が、結絃の手引きもあって西宮母との関係も良好なものに変えていくなど

ここで少し彼自身の誠実な振る舞いの結果に助けられたのではないかと思われる事も起こるようになっていきます。

そしてまさかの家族を交えての花火大会ですが、ここで事件が起こります。

硝子が突然家に帰ってしまい、結絃にカメラを持ってきてくれと頼まれた将也も同じく西宮家へと向かうのですが、なんとそこで硝子が飛び降り自殺を決行しようとしている現場に遭遇してしまうのでした...

 

将也の必死の助けもあって硝子は難を逃れるのですが、なんと助けようとした将也が落下してしまと形となります。

高所からまともに落下してしまった将也は長きにわたり昏睡状態に陥りますが、

ある時目を覚ました彼は”いつもの場所”へと駆け出し、硝子と再び再開します。

ここで互いの想いが伝わり...というところでこの映画のクライマックスシーンは終わりを迎えました。

 

この後も重要イベントとして文化祭のシーンがあるのですが、個人的にはそんなに印象に残るものではなかったのでなんともいえない気持ちです。

一応主人公の将也が救いを得てハッピーエンドなのですが...

 

 

 

 

各所で非常に高い評価を受けているこの作品、確かにエンタメ・恋愛モノとして見れば極めてクオリティは高く、非常に面白い作品でした。

今回はざっと見てそのままの感想を書いただけなのでまた機会があればキャラなどについても細かく論じてみたいと思います。